サイエンスとメディア

夜、NHKスペシャル「秘境シルクロード・カナス 森と伝説の湖」を見た。見事な映像がふんだんに盛り込まれていて、ついつい最後まで見入ってしまった。

この番組中で、アカシカという体重300キロを越える大型のシカの進化について研究している新疆大の教授が登場してきた。日本に留学していたことがあるそうで、日本語もそれなりに話せるようだ。モンゴルのエリートは何ヶ国語も話せる人が多い。自分の知り合いのモンゴル人医師は、母国語であるモンゴル語に加え、今は日本の大学で勉強しているので日本語も上手い。しかし学術論文を読んだり書くときには英語は必須である。その英語を勉強するときに使っている辞書はChinese-English Dictionary。医師免許をとったのは中国だったかな?--英語圏で生まれた人にはわからない苦労である。
動物の進化の研究で一番困難なのは、生態の観察やサンプル集めを主とするフィールドの部分であろう。サンプルさえ手に入ってしまえば、ミトコンドリアゲノムの一部の塩基を読んで、各地に生息するシカの同じ部分の塩基配列と並べてアラインメントさせて系統樹作れば大体出来上がり(かな?)。

学術論文としてはありがちな内容だけれども、テレビでこの仮説を一般向けにわかりやすく解説されると、CGやら神秘的な音楽の効果を駆使して非常にドラマチックに見せてくる。教育的だが、これでサイエンスに過剰なロマンを持ってしまうと失敗する。現場というものは、分野を問わずどこだって地味なもんである。自分もこれで引っ掛かった口。ああ。